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 SF小説から飛び出してきたかのような極彩色の鮮やかさだが、このゼブラフィッシュは架空の生き物などではない。生物学史上最も理解困難とされる組織の再生を調査するために、遺伝子を改変して作り出されたものだ。
Technicolor Zebrafish Reveal How Skin Heals

 「様々な種類の再生に関心があります」とアメリカ、デューク大学で細胞生物学の教鞭をとるケン・ポス教授が語ってくれた。「細胞の振る舞いを可視化できなかったことが、これまでずっと障害となってきました」

 ポス教授が”スキンボウ”の開発に長年を費やしたのはこのためだ。これは皮膚細胞のDNAコードに蛍光マーカーを組み込んで作られたゼブラフィッシュの突然変異種である。
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image credit:youtube
 こちらは一般的なゼブラフィッシュである

 色の違いが判るかと思う
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 スキンボウの各カラーマーカーは赤、緑、青の3色の蛍光色を発現させる。この3色と細胞ごとに数百もある遺伝子のコピーによって、細胞が取りうる色は数百色、あるいは数千色に達する可能性もある(ただし、既存の設備で区別できるのは70色)。この技術は博士研究員のチェン・フイ氏が開発したものだ。
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image credit:youtube
 「各細胞は発現した色の組み合わせに応じて、全体的な色を有します。その色は恒久的なもので再生を研究する際の基礎になるでしょう」とポス教授は説明する。

 これによって例えば、ヒレの細胞を傷つけた後の治癒プロセスを細胞レベルで直接確認することができる。組織が再生する際に現れた色のパターンから、どの細胞から発達したものか推測できるのだ。

 こうした実験から、意外にも傷がついてからわずか数時間で、残された細胞に表面での可動性が生まれることが判明したそうだ。また大きく成長し、ときに2倍にもなることが分かった。その後、下の層から新しい細胞が素早く傷ついた細胞に置き換わるという。
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image credit:youtube
 ゼブラフィッシュは典型的なモデル生物で、組織再生の研究などに特に適している。心臓や脊椎はおろか、ヒレ全体の損傷でさえも修復できるからだ。

 しかしポス教授が目指すのは、他の生物にも新しい技術を応用することだ。なんと人間ですらその対象に含まれている。想像してみてほしい。がん治療薬やその他の傷の治療薬に対する人体組織の反応を視覚化するために、医師がこの技術を採用するかもしれないのだ。
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image credit:youtube
 「理論的には、他の組織や生物にも応用可能な基礎的なプラットフォームです。適切な遺伝学ツールと組み合わせることで、時間経過とともに変化する組織の姿を捉える手法が開発されるでしょう」

via:cell・translated hiroching / edited by parumo

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コメント

1

1. 匿名処理班

  • 2016年04月10日 09:24
  • ID:Ge3kJVl70 #

なるほど分からんと思ったけど原理はイモリの卵を染めて染めた場所が将来何になるか調べるのと同じみたいね。

2

2. 匿名処理班

  • 2016年04月10日 09:31
  • ID:hQ47X4wM0 #

RGBとその組み合わせた色のどれかひとつしか発色しないのかな?
個人的にはRGB同時発色での白い細胞が欲しいな
アルビノ並みの白さでありながら実質的には宇宙線に負けない普通のお肌にもなれるってコトだよね?違うかな?教えて偉い人
まぁどうであれお魚君(ちゃん?)超綺麗 7色分のディスカスとか見てみたい

3

3. 匿名処理班

  • 2016年04月10日 10:09
  • ID:S9KM93gW0 #

カラフルな生物をつくることが目的なのではなく、実証・実験のうえで必要となる一種のマーカーなのかな? 発光クラゲが持つ蛍光グリーン遺伝子みたいな?

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4. 匿名処理班

  • 2016年04月10日 10:39
  • ID:unIXsPyC0 #

※3
白い細胞も中間色だって色々あるように見えるけど・・・

5

5. 匿名処理班

  • 2016年04月10日 10:42
  • ID:YAr6xx0I0 #

実験のためにたくさん傷つけられた魚の美しい姿か…切ないね

6

6. 匿名処理班

  • 2016年04月10日 11:57
  • ID:cpxSJ2Tc0 #

カラパイアで変な色の生き物見過ぎたせいで全然違和感ない…

7

7. 匿名処理班

  • 2016年04月10日 12:55
  • ID:CzBxPjeq0 #

ルアーみたい

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8. 匿名処理班

  • 2016年04月10日 13:14
  • ID:6ikC8dCz0 #

発光クラゲのノーベル賞の人とほぼ同じ発想。
理解も支援もほとんど受けられず、家族総出で
せっせとクラゲをとりつづけて後ろ指を刺されて
笑い者にされても研究をやめなかったあの人のおかげで
この手の研究がスムーズに進められるようになった。
クラゲ博士の功績は研究内容だけにとどまらない。

9

9. 匿名処理班

  • 2016年04月10日 13:36
  • ID:705HJRag0 #

キラキラした皮膚が自分のおなかに再生される場面を想像してウットリした

10

10. 匿名処理班

  • 2016年04月10日 13:55
  • ID:H6vYxx3u0 #

ヒレ全体の再生よりも脊椎と心臓の再生の方がびっくりしたわ

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11. 匿名処理班

  • 2016年04月10日 14:15
  • ID:HBSTuadJ0 #

近い将来、四肢の再生が可能な人類も出来るかも知れないね。
ただし、それらが失われる際の痛みに精神が耐える事が出来るかは別として。

12

12. 匿名処理班

  • 2016年04月10日 14:34
  • ID:b5XrvfY40 #

再生能力が凄い、ただ実験室から出してはいけない生物だと思う
放流ではなくほかの生物がこの細胞を口にするのもヤバいのかもしれない

13

13. 匿名処理班

  • 2016年04月10日 15:32
  • ID:WfCPNQe00 #

人造人間は虹色の心臓を義務付けられて製作者ごとに虹のパターンも決まっているのですねわかります。
過去記事「動物によってこんなに違う。奇妙な心臓を持つ6つの動物(昆虫注意)2015年02月20日」の6番「心臓を再生できるゼブラフィッシュ」にある写真と比べると金綺羅っぽさがすげえですね。人間に応用した遠い未来に萩尾望都のカレイドスコープアイが実現するのかー。

14

14. 匿名処理班

  • 2016年04月11日 00:31
  • ID:EpXdwRoh0 #

にじいろのさかな

15

15. 匿名処理班

  • 2016年04月11日 22:22
  • ID:LcOZN8Jf0 #

倫理的な事は置いといて、謎を解明すれば限定的な生体光学迷彩を実現できる訳か

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