00
 「私たちは火星への旅の最中にいて、多くの人がそのことを信じています。火星到達には、熱核推進がもっとも効果的な形式になるでしょう」

 NASA長官で、元宇宙飛行士のチャールズ・ボールデン氏は、今週、アメリカ議会へのスピーチでこう発言した。核を用いた有人火星飛行は、実現の数歩手前まで来ているという。
The Path to Mars: Boeing Leading Charge in Deep Space Mission
 熱核推進とは、文字どおり核分裂時に発する熱を利用した技術だ。ロケット内に核分裂炉を取り付け、核分裂により直接推進剤を加熱しノズルから噴出する。これにより地球の重力を脱出するに十分な推進力を得ることができる。このアイデア自体は比較的シンプルで、水蒸気を用いた現在のロケットの発電装置に使われているものと似ている。
7_e
 熱核推進ロケットは、従来の化学燃料を用いたロケットよりも速度が速い。また、他にも大きな利点がある。軽いのだ。既存のロケットの推進方法に比べ、約半分ほどの重量しか必要としない。重力が大きな課題になるロケットにとって、軽いというのはとても大切な要素だ。これによって今まで考えられなかった様々な演習や実験が可能になる。
6_e
 既に火星への宇宙飛行は計画段階に入っており、NASAは2033年までに有人火星飛行を実現しようとしている。また、NASAによると、ロシアでも2018年を目標に熱核エンジンをテストする計画を立てているという。
5_e
 ロシアは300億円以上の資金をかけ、熱核推進ロケットを開発している。理論上、6週間で火星への到達が可能だとロシアは考えている。現段階の技術では18ヶ月かかるから、もしかするとロシアが火星に到達する最初の国になるかもしれない。

 熱核推進ロケットは、核燃料を直接推進剤に使用するわけではなく、ロケット発射のための補助的な役割を担う形になる。とは言え、核の力を利用する以上、慎重な運用が求められる。安全上の懸念をぬぐえないのは確かだ。

 それでも人類は本格的に火星探査の道を歩み始めている。

via:Nasa wants to use nuclear rockets to get to Mars: Space agency claims the technique is 'most effective way' of reaching red planet・translated by はっち

▼あわせて読みたい
火星に入植するうえで鍵となる10種の先端技術は何か?


火星を植民地化するため、NASAは藻類や細菌を利用し酸素を作り出すプロジェクトを発足


2025年、火星への片道切符の旅。日本人10人が最終選考に入る。


ドラマティックな宇宙ロケット打ち上げ映像ベスト3


NASAが開発中のハイブリッドロケットモーターの地上燃焼実験

Advertisements

コメント

1

1. 匿名処理班

  • 2016年03月23日 09:23
  • ID:.zB.UTM10 #

KSPでもお世話になってるけど、重くて使いどころが難しいんだよなぁ。

2

2. 匿名処理班

  • 2016年03月23日 09:30
  • ID:IFUrT0gg0 #

宇宙への夢は尽きないけれど、核燃料搭載機が打ち上げに失敗したときとか、どうなるんだろうか。チャレンジャーみたいに爆発・空中分解なんてことになったとき、かなりヤバいことになりそうな・・・。心配ばかりしていたら科学の進歩もないという批判もあるけど、放射能汚染は正直もうこりごりなんだ。

3

3. 匿名処理班

  • 2016年03月23日 09:49
  • ID:mo6i2JGt0 #

※3
たしかに・・・失敗したときが怖いよね。じっさいロケットの打ち上げ失敗はあるんだし。
軌道上で組み立てるとかどうかな?技術的には難しいと思うけど。

4

4. 匿名処理班

  • 2016年03月23日 10:00
  • ID:mX6kQQCA0 #

≫3
正当な懸念だよ。
実際問題、核廃棄物の投棄のネックになっている。

5

5. 匿名処理班

  • 2016年03月23日 10:04
  • ID:xZiE45.l0 #

※3
歴史は繰り返す

6

6. 匿名処理班

  • 2016年03月23日 10:08
  • ID:Nw6h8TAn0 #

確かここで話題になってた新航法の「EMDrive」はどうなったのかな?
NASAで研究段階だって言ってたけど、実現すれば月まで4時間で行けるとか書いてあったけど

7

7. 匿名処理班

  • 2016年03月23日 10:16
  • ID:6LE1S9pH0 #

※3
電池としてつかってたりするからそのあたりの安全性は考えてるんじゃないかねぇ

8

8. 匿名処理班

  • 2016年03月23日 10:19
  • ID:W.usqAby0 #

※3
それも心配だけど、航行中に漏れたら火星行き霊柩車になっちまうんだぜ

9

9. 匿名処理班

  • 2016年03月23日 10:22
  • ID:uhYSDKQR0 #

※3
ケースに入れて打ち上げて、宇宙でくみ上げるだけ
チャレンジャーの事故でもキャビンは壊れてなかった

10

10. 匿名処理班

  • 2016年03月23日 10:47
  • ID:ZM35MBHw0 #

NASAの実現間近は数十年先の事だったりするからな
もちろん途中で白紙撤回もあり得る

11

11. 匿名処理班

  • 2016年03月23日 10:54
  • ID:bD9dwE310 #

火星で水が見つかってからというもの、NASAの本気ぶりはすごいな

12

12. 匿名処理班

  • 2016年03月23日 11:01
  • ID:YdWeF.1a0 #

やっぱり行き着くところは核燃料になってしまうのか
漫画やアニメで描く懸念がそのまま再現されそうで怖い
シズマドライブ的な何かの登場を期待したいところ

13

13. 匿名処理班

  • 2016年03月23日 11:18
  • ID:inrAKHby0 #

そして死んだと思われて火星に置き去りにされるんですね

14

14. 匿名処理班

  • 2016年03月23日 11:38
  • ID:GvU2lzMb0 #

あれ?アメリカで核融合ロケットができたとか言ってなかったケ?慣性封じ込めレーザー核融合とか?

15

15. 匿名処理班

  • 2016年03月23日 11:47
  • ID:3cr3oBRL0 #

※10
航行中にもれたらといういうが壁1枚向こうは何時も放射線まみれなんだけどな…、
居住環境と直結してなくてもいいんだから原子力潜水艦よりはずっと遮蔽は楽なんじゃね。
原子力電池はずっと昔から人工衛星とか探査機の電池で使われてるけど
幾つかやらかしてるよね。
さぁ、放射能で宇宙が汚れるとか言い出す奴が現れるかなw。

16

16. 匿名処理班

  • 2016年03月23日 12:06
  • ID:gYK.BQ650 #

※13
NASA「俺はやるぜ俺はやるぜ」

17

17. 匿名処理班

  • 2016年03月23日 12:07
  • ID:oDSjA.oE0 #

事故も勿論心配だが、発生する放射線の人体に対する影響は心配ないのかね?宇宙船は軽量に作らねばいけないから、放射線の防御用の分厚い金属板は搭載できないと思うので、人体に与える健康被害が特に心配だ。

18

18. 匿名処理班

  • 2016年03月23日 12:12
  • ID:AHdzDCRg0 #

素人の自分にでさえ様々な懸念が考えられるのに、宇宙飛行士に今以上にストレス与えて
正常な任務遂行できるのだろうか・・・もともと危険覚悟なのは解るのけど・・

19

19. 匿名処理班

  • 2016年03月23日 12:45
  • ID:f6YObUDu0 #

※21
まあ素人より賢くて覚悟もあるプロならその懸念がほんとに懸念すべきことかそれ自体を考えられるだろう

20

20. 匿名処理班

  • 2016年03月23日 12:47
  • ID:svVnnbic0 #

発射の時に使うだけですぐに切り離しちゃうってことですか?

21

21. 匿名処理班

  • 2016年03月23日 12:54
  • ID:3wqwkcW00 #

科学ロケットよりも高速で………
火星に着いた時に止まるのはどうするんだ?

22

22. 匿名処理班

  • 2016年03月23日 13:00
  • ID:xGH6Ox6e0 #

色々考えると、火星に行くより、1週間ほど熱海でゆっくりしにいきたいな。

23

23. 匿名処理班

  • 2016年03月23日 13:17
  • ID:ioWTMuNZ0 #

うーん願わくば現段階で打ち上げに使用するのはお止めいただきたい!
個人的にはもう一段技術革新がないと、学術的利益と天秤に掛けた際のリスクが高すぎると思いますね。
あと案外まだ浸透していないのですが、チャレンジャー号事故はほぼ利害関係が原因の人災です…。知らなかった方は是非調べてみて欲しいです。
時代背景もあっての事でしょうが、僕にとっては非常にショッキングな内容でした。

24

24. 匿名処理班

  • 2016年03月23日 13:29
  • ID:bPfz.JJ60 #

※16
アストロノーツはフランス人かな

25

25. 匿名処理班

  • 2016年03月23日 13:35
  • ID:TEMqoMZV0 #

>>22
その理屈は福島第二が吹っ飛んで
通用しなくなった。

26

26. 匿名処理班

  • 2016年03月23日 13:47
  • ID:goerlcLj0 #

そうか、アトムの足から出るジェット噴射はこれだったんだ。
原子力でどうやってジェット出すのか
ナゾだったんだけどようやくわかった。

27

27. 匿名処理班

  • 2016年03月23日 13:48
  • ID:XTiuqyGG0 #

小規模の核爆発を繰り返す核パルスエンジンジじゃないの?

28

28. 匿名処理班

  • 2016年03月23日 13:56
  • ID:I2moXsju0 #

核推進は宇宙空間での加速・減速につかうんだよ。
打ち上げ時は通常の化学燃料ロケットで大気圏を上昇させる。
使うのはチッコイ原子炉だろうけど、
打ち上げ失敗爆発で大気圏への放射性物質拡散のリスクは原子力電池より大きいね。

29

29. 匿名処理班

  • 2016年03月23日 16:06
  • ID:zYN6mnXY0 #

まさかマクロスみたいな単語をリアルできくとはねえ、あっちは核融合だけど

30

30. 匿名処理班

  • 2016年03月23日 16:29
  • ID:0DN03xn40 #

推進剤にはなにを使うのかな。水とか?
核の熱で水蒸気を作って、それを噴射して進む……意外とローテク?

31

31. 匿名処理班

  • 2016年03月23日 17:39
  • ID:BXir41Fu0 #

これまで宇宙に行った原子炉って非公開含めるとどれだけなのでしょうね。打ち上げ失敗粉々がすでにあっても不思議でない雰囲気。地上に落ちたコスモス954の炉、落ちかけたコスモス1900の炉、他にも事例を読むと不安を感じますが火星の計画自体は胸熱で、使う炉全部の運搬打ち上げが無事に成功しますように。
サムネ画像。エンジンは一番右の筒なのに、ついそっちを先頭に見てしまいます。固定観念の縛りって強力。

32

32. 匿名処理班

  • 2016年03月23日 18:34
  • ID:RJIWTpLS0 #

※3
軌道エレベータができればその懸念は払拭されるんだよね
でもまだ無理なんだろうなぁ。。。

33

33. 匿名処理班

  • 2016年03月23日 19:43
  • ID:iKWPzLhj0 #

そういえば、宇宙空間って放射線が充満しているんだよね。
ただ、地球の持つ地盤による「バンアレン帯」によるバリア効果でほとんど地表に到達していないだけで。
そういう意味では、宇宙飛行士は「核エンジンの有無」に関わらず常に放射線による被ばくにさらされているのだけど。
※16そして、いくら待っても救助が来ないから、絶望して巨大怪獣になるのですね。
「故郷は地球」とかいって。

34

34. 匿名処理班

  • 2016年03月23日 22:29
  • ID:iKWPzLhj0 #

どうでもいいことだけど、※38中の「地球の持つ地盤による「バンアレン帯」によるバリア効果で」でというのは「地球の持つ磁場による「バンアレン帯」によるバリア効果で」の間違いだから。念のため訂正しておくっす。
なんかwin10にしてから、文字の入力の具合がおかしい。余計な予測変換が表示されて、入力している文字が見えなくなるし。
まあ、ネットで調べてこの問題は解決したけど。

35

35. 匿名処理班

  • 2016年03月23日 23:20
  • ID:NoHDc4xO0 #

※26
「地球の重力を脱出」ってあるんで紛らわしいけど、31が書いてるみたくいっかい地球周回軌道に入ってから原子炉始動して抜けるっちゅう方式らしい。
まあ打ち上げ時には確実に放射性物質積んでるわけだからあんまり気持ちのいいもんでもないねえ。
チャレンジャー号事故って、「当日寒すぎてOリング機能しないよ!」ってブースター製造会社の技術者サイドが警告してたにも関わらず、ホワイトハウスに「やだい一般教書演説前に打ち上げるんだい」って言われたNASAがゴリ押しして、会社の上層部も金に目がくらんで打ち上げ強行した末の惨事ってヤツか。ひでえ話だな。

36

36. 匿名処理班

  • 2016年03月24日 03:37
  • ID:CO2q0hXs0 #

宇宙世紀ガンダムシリーズでは、お馴染みの技術だよね。
その実用化が見えてきたというのは、素直に凄いわ。

37

37. 匿名処理班

  • 2016年03月24日 09:46
  • ID:4GMMvbX70 #

長期の宇宙放射線をやり過ごすには水タンクを気密区画の外側に配置して遮蔽するやり方もあるけれど
それには大量の水を持っていける軽量で高性能な推進機関が必要になる訳で
宇宙放射線を防ぐには原子力も不可欠という判断に傾いてるんだろ

38

38. 匿名処理班

  • 2016年03月24日 18:21
  • ID:ZNZTss2z0 #

なるほどなあ。この動画心地よい音楽とテンポだね

39

39. 匿名処理班

  • 2016年03月24日 19:18
  • ID:BCrGBtUd0 #

打ち上げ失敗したら

アカンのと違う?

40

40. 匿名処理班

  • 2016年03月26日 10:50
  • ID:JSLBruKR0 #

※40
ありがとうございます。僕も元記事読んでみました。打ち上げ時の推進力ではないのですね。早とちりしてしまいました。
原子力自体については色眼鏡はないつもりなのですが、現状他のエネルギーと比して色々チートすぎるので、ここで原子力に舵を切ってしまうと技術的に袋小路に入ってしまいそうなのも心配なんですよね。あと少しで手の届いた技術にお金や人が回らなくなったり…。不測の事態が起きた際の後始末が突出して厄介というのも懸念点です。
それとチャレンジャー号事故、まさにそれです。事故調でファインマン博士がOリングを氷水に漬けて実演したヤツですね。乗組員は成功の為に周囲が万全を期してくれていると信じていたと思うとやりきれません…。
最後まで経営陣に反抗した技術者は不当に解雇され、僕が聞いた時点ではそれが取り消されていなかったというのも酷いです。

41

41. 匿名処理班

  • 2018年07月22日 23:19
  • ID:GeVyrgCw0 #

ん?これ核燃料推進システムを宇宙空間航行に限定してない感じ?
まあ、発射時に使ってようが使っていまいが、落ちてきた時の被害は変わらないんだろうけど

お名前
Sponsored Links
記事検索
月別アーカイブ
Sponsored Links
Sponsored Links