シンガポールに拠点を置くPirate3D社は、3Dプリンターを使って、視覚障害者向けに、写真や絵画をベースにしたリアルな3Dオブジェを製作している。
「もしも写真に触れることができたら・・・」この製品のキャンペーン映像では人生の途中で目の見えなくなった5人と彼らが各自の"思い出に触れた"時の様子が公開された。
目が見えない人にとって写真は何の思い出にもならない。だが手に触れその形を実感することができる立体オブジェは、彼らが心に刻んだ思い出を鮮明に呼び起こしてくれるようだ。 Touchable Memories
動画には、12年前に失明したにもかかわらず、定期的に映画製作に励む撮影ディレクターのガボールが登場する。
この前はボリビアでロケを終えたものの、それを見ることは叶わないと語る彼。そんなガボールが今も鮮明に心に残る思い出のシーンのレプリカに触れる。
彼はオブジェの細かい部分までチェックする。例えばテーブルの位置、そして椅子に座る女性はどんな感じなのか、という風に。視聴者は彼の記憶が完璧に再現されているミニチュアに驚くだろう。
また、そこには緑内障で視力を失ったミュージシャンのマリオも登場している。彼の思い出は友達がデザインしたアルバムの表紙をプリントしたものだ。
マリオにとって他の人から見た自分自身の外見を知るのはこれが初めての経験だ。
このプロジェクトに携わるフレッド・ボッシュはその実験の素晴らしい効果について、以下のように話している。
非常に長い沈黙の間に時を遡り、感動の波に飲み込まれる彼らの様子を目の当たりにしました。彼らの表情から伝わってくるんです。とくにダニエラはすごかったですね。
彼女は自らが選んだ思い出により、子供時代だけでなく家族とスキーをした冬休みの時点まで引き戻されました。さらにこのオブジェに触れたことをきっかけに、当時かぶっていたニット帽やブーツで雪の上を歩いた時のパリパリという音など、彼女自身も忘れていた細部の記憶まで思い出したのです
彼らの反応を見ればわかるように、この技術が目の見えない人々のアルバムの役割を果たしてくれることだろう。
その昔ルイ・ブライユの発明により世界に広まった点字同様、3Dプリントは情報の吸収や共有手段に再び変化をもたらすのだ。
via:beautifuldecay・原文翻訳:R
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コメント
1. 匿名処理班
みんなとてもいい笑顔で「見て」いる
それ以上の説明は何も要らないぐらい
2. 匿名処理班
今年1年で3Dプリンターすごいね。
モノ作りだけだと思ってたけど、
医療や心理の分野でも活躍し始めている。
これからどんどん身近になっていくのかな。
3. 匿名処理班
あれ・・・目から汗が・・・
4. 匿名処理班
何だろう、涙が出てくる
3Dプリントがもっと気軽に素早く作れて、簡単に壊してその素材を再利用してまた3Dプリントをする、なんて事ができるようになったら、彼らは俺らがアルバムをめくるみたいな感覚でもっと「写真」を楽しめるようになるだろうな
5. 匿名処理班
こういう使い方を思いついた人にもノーベル平和賞をあげればいいのに。
すごく暖かい使い方だよね
6. 全温度チアー
そういえば『二十四の瞳』にこんなシーンがあった。
戦争で仲間や自分の視力を失った青年が、むかしのクラス全員が写った写真を手にして、
「この写真は見えるんじゃ。な、ほら、まん中のこれが先生じゃろ。その前にわしと竹一と仁太が並んどる。先生の右のこれがマアちゃんで、こっちが富士子じゃ。マッちゃんが左の小指を一本ぎり残して、手をくんどる、それから・・・」
7. 匿名処理班
できれば表面の質感とか工夫してほしい
もっと彼らに”見える”だろうから
8. 匿名処理班
技術の良い活用方法だと思う
9. 匿名処理班
なんでもかんでも3Dプリンタというのはどうかと思うけど、この使い方は素晴らしいと思った。
10. 匿名処理班
こんなのが盲人の思い出になると思うのは健常者だからの発想な気がする。
だってさ、、中途で盲人になった人は、山の形、川、海がどんなものか知ってる。
人の見た目も。
でも生まれつき盲人の「僕」には形は分からない。
普段触る身の回りの物ですら、形しか分からない。
その形が全体にどんなのかは知らないし、色は、言葉でしか知らない。
「僕」にとって思い出になるのは、写真や絵じゃない。音なんだ。
と、友達の盲人が言ってますが。。。
11. 匿名処理班
※6
だが彼が指す位置は一か所づつずれているんだってしめくくり
そこがまた、何とも言えない読後感があるんだが
12. 匿名処理班
スゲーアイディアだ・・・・。実現してるという意味も含めて
13. 匿名処理班
世界中で広まって欲しいな♡
まさに正しい使い方だ、
みんなが良い笑顔(^-^)
14. 匿名処理班
技術に真の意味で正しい使い方なんて無いんだろうけど、それでもこれは誰にも触れられるブレイクスルーだ
15. 匿名処理班
※10はもう少しちゃんと記事を読もう。
> 人生の途中で目の見えなくなった5人と彼らが各自の"思い出に触れた"時の様子が公開された
残念ながら、お友達は今回のケースからは対象外のようだ。
でもお友達のような人々にも、この先何か革新的な素晴らしいサービスが生まれるかもしれないね。
それを待てないなら、あなたやそのお友達自身が考えてもいいと思うよ。
16. 匿名処理班
記憶を鮮明に蘇らせる時に少しだけ呼び水と言うか触媒の様なものが必要な時がある。
懐かしの写真だったり、絵だったり、チケットだったり、ダサいけど捨てられない想い出の品だったり。無くしてしまったものは見つからない場合が多いけれど、こんなふうに立体に仕立てるってのも良いなって思った。
ドガは晩年目を悪くしてからは立体の制作をしていたし、最後の方まで記憶として残せるのはもしかしたら、触覚=立体なのかもと思った。
17. 匿名処理班
以前、図書館の本を点字に翻訳する(点字を打ったテープを貼る)ボランティアの話を聞いたが、打つ手間がかかるために、なかなか冊数が増えないと言っていた
3Dプリンターを利用できたら、長編でもいけるんじゃないだろうか
見えない人のための図書館ができたらいいな、自分の老後のためにも
18. 匿名処理班
※10 昔の分は残念ながら近いものしか与えられないだろうけど(川の音や森の音とか)
これからは、そのお友達は常にスマホかICレコーダーで録音しておけばいいんじゃないの?そして自分が残したい部分だけ切り取って残すとか(作業には人の手伝いが必要かもだけど)
19. 匿名処理班
工業高校等が、3Dプリンターを使って、駅構内のジオラマや、歴史的建造物、原爆ドームや国会議事堂、植物の茎と根の断面など、触れる教材を作って、盲学校に寄贈していたりする。