世界には数百年、数千年の歴史を持つ文化的遺産とも言うべき場所や建造物が存在している。人類が発見するずっと前から存在し、時を刻みながらその美しさを今に伝えている。
だが地球環境はめまぐるしく変わる。自然災害などに人為的な問題が加わり、今世紀が終わるころには消滅してしまうかもしれないものもある。
ここで上げる10の素晴らしい場所は、近い将来消える可能性の高いものである。
10. グレイシャー国立公園の氷河 :アメリカ・モンタナ州
約1万年前、グレイシャー国立公園エリアの氷は1.6kmの深さを誇っていた。1910年にこの公園が発見された時には約150の氷河が残っていたが、現在は25の氷河しか残っていない、そして今残っている氷河も2030年までにはなくなるだろうといわれている。
公園の中心にあるグリネル氷河は過去数世紀の間にその90%以上を失った。地球温暖化の影響によるものだと言われているが、他の場所と比べてみてもその影響は大きく、この地の温度上昇幅は、他の場所と比べ、約1.8倍も大きいという。
消失の危機にあるのは氷河だけではない。氷河の雪解け水により生態系を維持しているオオカミ、エルク、クマなどにも影響を及ぼす。もしもこの氷河が消失したら、氷河期から残存する貴重な遺産が失われるだけではなく、そこに住む生物たちも住処を失うこととなるだろう。
9. 王家の谷 :エジプト・テーベ
エジプト、テーベのナイル川西岸の岩山にある岩窟墓群は王家の谷と呼ばれている。ここには、ラムセス2世や若くして王座に就いたツタンカーメンなど、エジプトを代表するファラオたちが眠っている。
かつてはトレジャーハンターたちの格好のターゲットとなっていたが、現在、王家の谷は別の脅威に直面している。それはこれらの歴史的建造物を一目見ようと訪れる観光客たちによって引き起こされている。墓内部の換気システムが充分でないことや、数千人もの観光客の呼気により寄生虫が猛繁殖しているのだ。そのため150年以内に墓はなくなるだろうといわれている。
墓内にある版画や壁画も消え始めている。この問題に対処するため墓の内部では人数制限を設け、いくつかの展示物は完全に人の目につかないところにしまわれてしまった。これらの規制や墓内部の新たな換気システムが墓を救うことになることを期待したい。
8. セーシェルの島々
アフリカ大陸から1,300kmほど離れたインド洋に浮かぶ115の島々からなる国家、セーシェルはマダガスカル諸島の近くに位置している。
東インド会社が1600年代に発見した後、この地は海賊たちの憩いの場となり、今日では世界最大級のサメ、ジンベイザメを見ることができる地として知られている。セーシェルに住む動物たちは厳重に保護されていて、その生物の多様性や自然の雄大さに対し科学的にも重要な地としてみなされている。
しかしながら半世紀以内にこの島々はサンゴ礁の破壊により海の底に沈むといわれている。セーシェルにおけるサンゴ礁の破壊というのは世界的に見てもかなりひどいものだ。海水温度の上昇が原因とみられているが、サンゴが死んだ残骸が生態系を破壊している。サンゴ礁により、島はハリケーンなどの自然災害に守られてきたが、それを失うことにより、住人が災害に対し脆い状態になってきている。
7. オリンピア :ギリシャ
オリンピアは、ギリシアのペロポネソス半島西部に位置する古代ギリシアの都市である。長い間オリンピアの王であるゼウスを崇める集団がこの地に住んでいた。都市のほぼすべてはゼウスに対する敬意を表すためにデザインされていて、その中には現在は失われてしまったが象牙と金で覆われた13mに及ぶゼノス像や、ゼウスへの敬意を表するためのオリンピック場も作られた。オリンピックの聖火は今でもこの地で点火されゲームが開催される地へと運ばれていく。
皮肉なことにこの地の脅威となっているものは火である。2007年に放火魔から始まったいくつかの火事がものすごいスピードで広がり、60人以上の人々がなくなった。炎はかろうじて有志の消防団によりオリンピック発祥の地から遠ざけることができた。地球温暖化の影響により火事が起きやすくなりまた炎はその破壊力を増した。その炎は皮肉にも、遺跡保存のために行われた努力が無駄になってしまうような脅威を与えようとしている。
6. チャンチャン遺跡:ペルー
チャンチャンはペルーにある遺跡でアメリカ先史以前、日干し煉瓦の家が特徴の、最大の都市と知られている。この地はもともとチム族の土地で、彼らはこの都市を9つに分け、それぞれに自治権をもった要塞に作り上げた。
チャンチャンはまた、“新世界における最初の本物の工学技術を持つ都市”としても知られている。都市全体を網羅する灌漑システムや、80km北に位置するチカマ川から水を引いて大規模な川を作る計画はこの時代の“文明化された”ヨーロッパでも見つけることはできない。チャンチャンはインカ帝国の侵略に会うまで600年もの間に渡り繁栄し続けた。
チャンチャンは今日、エルニーニョ現象による嵐の被害に晒されている。さらに巨大な地震が都市を崩壊の危機に陥れている。
5.ガラパゴス諸島 :エクアドル
東太平洋上の赤道下にあるエクアドル領の諸島、ガラパゴス諸島は、チャールズダーウィンが進化論を確立したのが場所としても知られている。
9000種近くもの生物がいて、その大多数が他のどの場所でも見つけることができない。だが現在、ガラパゴス諸島の生態系は深刻な危機に陥っている。
島に移住してくる労働者や観光客の増加に伴い、直接的な環境汚染や撹乱、外来生物の繁殖、横行する密漁など、多くの問題を抱えた結果、ガラパゴスの動物たちは急速に脅かされた。特に外来生物が増えたことで、島の生態系を壊しはじめたのだ。
2007年6月、危機遺産リストに登録されたが、その後のエクアドル当局の取り組みが評価され、2010年の第34回世界遺産委員会で危機遺産リストから除去された。
4. ヘルソネス遺跡 :ロシア(ウクライナ)
クリミア半島南西に位置するヘルソネス遺跡は、紀元前200~300年に作られて以来、古代ギリシャ遺跡の様相を色濃く残している。
しかしながらこの地では争いが絶えなかった。歴史的記録によるとこの都市国家はスキタイ人やローマ帝国との戦いを常に行っていたようだ。最終的にはローマ帝国にその独立性を奪われることとなった。
5世紀にはキリスト教が勢力を広めるにつれ、ほとんどのギリシャ建築や寺院が破壊されていった。ビザンチン帝国の一部となった後も、ギリシャ建築や寺院が充分に保護されることなく、その後は遊牧民族たちの手によって燃やされ、破壊されてしまった。
1800年代に入りこの地は、クリミア統合の際にソ連によって発見された。その後厳重に保護され、修復工事が行われ、ロシアの歴史、そして考古学的見地から見ても大切なものとなった。今日では自然と人間両方の力による脅威を受けている。海岸の浸食や汚染問題、都市化などその脅威は多岐に渡っている。
3. イントラムロス :フィリピン
フィリピンで2番目の大きさを誇るマニラの一画にイントラムロスという地区がある。この”イントラムロス(Intramurostra)”とは“壁の内側で”という意味があり、16世紀作られたこの壁はずっと町を守ってきた。ここはもともとスペイン帝国が領土として所有していた時代、首都として機能していた。
第二次世界大戦中、日本帝国軍はフィリピンに侵攻した。サントドミンゴ教会や、サントトモス大学(再建前)などの歴史的建築物が破壊された。その後アメリカ軍が日本軍から町を奪還するために行った作戦において95%の建物が破壊され、40%の外壁はただの石の塊となった。
1951年インストラムロスは歴史的モニュメントであると宣言され、ゆっくりだが復元が進められたが都市化の波がそれを阻んだ。スターバックスやマクドナルドなどの外資系ファストフード店がが城壁内に作られた。砦の周りの堀は埋め立てられゴルフコースに変わってしまった。歴史研究家たちは次に何が起こるのかとビクビクしながら行く末を見守っている。
2.ヒシャムパレス :パレスチナ
紀元前747年、地下へと埋められたイスラム時代の宮殿遺跡、ヒシャムパレスは、パレスチナ人考古学者、DC バラムキ氏が1934年に発掘するまで人の目に触れることはなかった。だがそれも束の間。歴史家たちはこの光景をあと100年も維持することはできないだろうと悲観している。
ヒシャムパレスに関しては謎が多く、いったい誰が何のために作った宮殿なのかもわかっていない。考古学者が持っている唯一のヒントは陶器に書かれた”Hisham”という記述のみだ。バラムキ氏の同僚のロバートW ハミルトン氏はこれはワリード2世の遺産なのではないかと主張している。現在わかっている事実は、これが8世紀に建てられたものであり、巨大な地震によって破壊されたということだけだ。
だが残念なことにパレスの秘密を解き明かすことはできないだろう。この地もまた近代化の波に逆らうことはできそうもないからだ。
1. ラム :ケニア
ケニアにあるラムという都市は、2001年に世界遺産として登録された。ラムはもともとスワヒリ人の居住地で14世紀頃からここで人々が生活していた。最盛期には芸術、政治、文学の分野でとても栄えた地でもあった。のちにドイツとイギリスにとって重要な戦略的地域とになり占領されたが、1960年になりやっと独立することができた。
数世紀の間繁栄していたラムだが、住民は流出を続けている。2011年ラムへ旅行することは禁止された。アルシャバブというテロリストグループが暗躍しており、ムスリムの土地を奪われた恨みを晴らすという名目で、数々の誘拐事件を起こしたり、容赦ない攻撃を行っているのだ。死者が続出し、テロ攻撃によりラム港などの歴史的な場所を守ることはほぼ不可能となった。
タージ・マハル :インド
インド・イスラーム文化の代表的建築であるタージ・マハルも例外ではない。古代インドを彷彿とさせる、息を呑むような素晴らしい建築物だが、5年以内には一般公開を完全に終了するそうだ。十数年前、建物に関する調査が行われた結果、空気と水の汚染により美しい白い壁が黄色く濁ってきたという。これを受けインド最高裁判所は修復を命令した。この問題は世界的な関心を集めたが2014年現在、なんの進展もしていない。
また、信憑性のほどは定かでないが、近年、建物周辺の窒素酸化物の値が急激に上がっているという。車がタージ。マハルの500m以内に近づくことは許されていない。アグラの街が近代化されていくにつれ、交通量も自然と増える。この先に待っているタージマハルの運命は明るいものとは言い難い。
via:listverse・原文翻訳:Tomohide
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コメント
1. 匿名処理班
今の人間って遺跡から見たらガンだろうな
その反面グレートジンバブエのように文化制圧しても
古代の人々に畏敬をしつつ維持管理した人々もいたし
遺跡保護って人々の心次第なんだろうな
2. 匿名処理班
王家の谷で増えているのは寄生虫ではなくカビなのでは
本気で守りたいならガラパゴス諸島はしばらく上陸禁止にした方がいいんじゃないか・・・観光客の落とす金が大きいからそうはいかないんだろうけどさ
3. 匿名処理班
過去へ行って見てみたい景色がある。
でも今の全ても見たことはない。
4. 匿名処理班
ウユニ塩湖。
あそこは見たいから なんて軽々しい動機で
足を踏み入れて良い場所じゃあない。
たのむから民間人立ち入り禁止にして保護してください。
5. 匿名処理班
もう20年以上前、どうしても、どうしても、どうしても見たくて、見なきゃいけないと思って王家の谷に行った。
似たような意識を感じさせるアメリカ人グループにも会った。
もう 1 回見てみたいと思ってる。
なんとか機会を作って俺はまた行く。
6. 匿名処理班
まぁ、森羅万象すべてのものに終わりはあるワケで
問題は時間と自然の摂理であるがまま消えていくのか、
我々がそれを無意味に加速させてるのかってコトだね
7. 匿名処理班
人類が作った物なんざ消えてもらってかまわないが
自然は違う
8. 匿名処理班
自然物だろうが、人工物だろうが、代わらずそこにあり続けるなんて絶対にない。
そうありたいと思うことすら、ある意味人の傲慢ではないか。
そもそも、壊れなくなってしまう事ばかり気にしているが、新しく作られ紡がれていっている事にも目を向けるべきだろう。
壊れ廃墟になった後にも華は咲く。
9. 匿名処理班
※5
保護するも何も、天然資源が見つかったとかで一時期大騒ぎしてたけどどうなるんだろうね。
ウユニはとても広いし、とんでもなく田舎にあるから人為的な環境破壊は今のとこ見られないみたいだけど。
10. 匿名処理班
高松塚古墳の壁画もあっという間にカビで黒ずんだな
11. 匿名処理班
本来永遠に残るものなんてないしあってはならない
特に遺跡なんてものは不法投棄物みたいなものだ
文化の継承や発展はするべきだが
12. 匿名処理班
タージ・マハルは高圧洗浄機使えばピカピカになるんじゃね
ちょっと削れるかもしれないけど
13. 匿名処理班
で、サムネの海の中の川はどこなんですか?初めて見たし、すばらしいんですけど。
14. 匿名処理班
※17
グレートバリアリーフ。
海面温度上昇などでサンゴの白化が進んでいる。
15. 匿名処理班
遺跡は、精密な3Dデータでもとって保管しとけばいいよ。
自然はどうしようもない。変化を含めて自然だから。
16. 匿名処理班
「”変化”以外に不変のものはありえない」
どんな形であれ、いつかは消え去るものである以上、仕方ないよね
どうしてモヘンジョダロが入ってないんだろ?
発掘しちゃったせいで塩害が発生して、遺跡が崩壊する可能性が高い、って話じゃ無かったっけ?
17. 匿名処理班
セーシェル諸島綺麗なのにヤバイのか
知らなかった恥ずかしい
18. 匿名処理班
失われた遺跡はやがて伝説となる
19. 匿名処理班
タージマハルは行っておきたいなぁ
20. 匿名処理班
定めじゃよ…
21. 匿名処理班
作るより保存する方が難しいということなのかな。
22. 匿名処理班
文化財を活かした街作りが出来ないっつーのは実に哀れだな
23. 匿名処理班
紀元前にイスラム教の神殿があったてのは初耳だな
そっちの方が大発見じゃね?
24.